プロシンガーが教える「心と身体に効く発声法」第3回

今すぐ実践できる! 音痴な人へのアドバイス

本稿の第1回第2回では、豊かに響く声はどういう仕組みで出るのか、そして正しい発声に必要な腹式呼吸のやり方についてご紹介してきました。腹式呼吸をマスターすることで、見た目にも美しく、心と身体の健康維持にも繋がるということもお分かりいただけたかと思います。
とはいえ、人前で歌ったり喋ったりするのが、どうしても苦手だという方もいらっしゃいますよね。今よりもっとカラオケでうまく歌えるようになりたい、という声も数多く耳にします。最終回の今回は引き続きプロのシンガーソングライター、ボイストレーナーのLillia(リリア)さんに話を伺い、歌に関するアドバイスを、ご自身の経験も含めて語っていただきました。
 
 
——私、実はカラオケが苦手でして(笑)。声が小さいとか、音程が取れないとか、そういう悩みを抱えた方は結構いると思うんです。そうした方に向けたアドバイスや、ちょっとしたコツを教えていただけますか?

「まずは口を大きく開けて、ちょうど卵の形になるイメージで声を出してみてください。この時、唇や舌に力を入れないように。力みを抜くことによって、ナチュラルで大きい声が出やすくなります」
 
 
——音痴に悩んでいる場合、どうしたら音程が取れるようになりますか?

「音程を外している人って、案外、ちゃんと自分を声を聴けていないことが多いんです。ですから、自分の声とカラオケの音を、しっかり聴きながら歌ってみてください」
 
 
——なるほど。

「途中まではちゃんと歌えているのに、自分の出せる音域を超えた途端、音を外してしまう方もいらっしゃいます。音域はトレーニング次第で広げることができますから、もっと上手に歌いたいという意欲が湧いてきたら、少しずつ広げていくといいと思いますよ」
 
 
——まさにコンプレックスの克服、ですね。

「一流の歌手は様々なテクニックを持っていますが、人の心を動かすのって、そういう技術だけじゃないと思うんです。だから、うまく歌おうとするより、誰かのために歌ってみてください。もちろん自分のためでもいいんです。自分が楽しいから歌う。それだけでも歌は上達していきます。
その場を盛り上げるために一所懸命歌っているうちに、音痴に悩んでいた人が段々と音程を取れるようになったという例もあるんですよ。なので、まずはコンプレックスを手放して、ありのままの自分を認めてあげてくださいね。そういう『自己承認力』を身につけることが大切だと思いますよ」
 
 
——下手でもいい。自分らしさを表現するんだ。そう割り切って歌うことができたら、本番に強いメンタルが身につきそうですね。とても勇気がいることですが。
 
 

自分らしさの追求、声に秘められた力とは

「私は歌を通して、より多くの人にイキイキと人生を生きてほしいと思っているんです。今、この瞬間を豊かに生きることの大切さ。それを、歌を通して皆さんに伝えることが、私の役割かな、と考えています」
 
 
——Lilliaさんがそうお考えになるきっかけは何だったのでしょう。

「以前、バーで年配の方に声をかけられたことがあったんです。その方、相当酔ってらして(笑)。で、成り行きで一曲、『アヴェ・マリア』をアカペラで歌うことになったのですが、その方、すごく感動した、癒されたといってポロポロ泣き出したんですよ。最初はお世辞かなと思っていたんですが、でも、そのうち他の方からも『癒しをもらった』という反響をいただくようになって。次第に『自分が歌ってもいいんだ』と思えるようになりました」
 
 
——Lilliaさんの仰る「自己承認力」は、まさにご自身の体験から得たものなんですね。

「そうなんです。声を出す時って、自分のパワーが溢れる瞬間でもあるんですよ。実際、レッスンを終えた後の生徒さんは、皆とてもいい表情をしています。声を出すことによって、その人にしかないエネルギーが溢れ、本当にイキイキと輝いて見えるんです。
ですから、歌にコンプレックスを持っている方には、まず歌いたい曲、好きな曲を歌ってみることをお勧めしています」
 
 
——好きな曲=歌える曲にならない時もありますよね。音域が足りないとか、リズムに乗れないとか……。その場合はどうしたらいいでしょう?

「そういう時は、服を選ぶ時をイメージしてみてください。好きな服と似合う服は、必ずしも同じではないですよね。その時に自分がどうしたいか、だと思います。
どうしても好きな服を着たいと思うなら、それが着られるように努力してみること。逆に、似合う服が自分の好きな服だと気がつくこともあると思います。いずれにせよ、『好き』に自分らしさのヒントは隠れていると思いますよ」
 
 
——まずは自分らしく、ということですね。声や歌に秘められたパワーの奥深さを感じました。最後になりますが、シンガーソングライターであり、ボイストレーナーでもあるLilliaさんから、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

「私自身がキーワードにしているのは、『チャレンジすること』『楽しむこと』『好きという気持ちを大切にすること』の3つです。チャレンジしなければ成長もありません。現状維持どころか、パワーがダウンしてしまいますね。ですから、常に挑戦し続ける心を持ってほしいし、自分自身もそうありたいと考えています。そして、どんな時でも今を楽しみ、好きだという気持ちを忘れないこと。これは歌だけでなく、人生そのものに通じることでもありますね。
失敗を恐れるのではなく、余計な雑念を払って自分のやりたいこと、好きなことに集中しましょう。歌が好きな方も、ちょっと苦手だという方も、楽しむ心を常に忘れないことが大切です。3つのキーワード、ぜひ実践してみてくださいね」
 
 

 
 

Lillia(リリア) プロフィール

4歳からピアノを習い、音楽大学の声楽科を卒業。現在はシンガーソングライター、ボイストレーナーとして活躍中。1st.マキシシングル『Earth』をリリース。

 
 
・Lillia Official Ownd

・第一回はこちら
・第二回はこちら

投稿者プロフィール

羽野 知
羽野 知
編集者兼フリーランスライター。アパレル業界、旅行代理店、インテリア家具販売、不動産業、カフェ経営、某コンビニエンスストア勤務など、様々なキャリアを持っている。趣味はラグビーをはじめとするスポーツ観戦、路傍の花と自由な猫たちに出会うこと。現在は声帯の仕組みについて独学中。

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